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電力専科


スマートグリッドと揚水発電所


◆TV番組のコメンテーターに「いつもガッカリ」してます。

2011年3月の東日本大震災、福島第1原発事故とそれに続く計画停電、各地の原発運転停止、電力需給の逼迫・・・・電力需給の先行きの見通しが困難な情勢ですね。

ところで・・・
あるTV番組でスマートグリッド、スマートシティーのお話が出て、コメンテーターが「揚水発電所」の事を誤って解説していました。

揚水発電所は、スマートグリッドには、蓄電池のように働き・・・水の位置エネルギーで電気を蓄えておける・・・とのお話でした。

◆これを聞いて・・・少し間違いがあると感じました。

即ちスマートグリッドの場合は、現在あるほとんどの揚水発電所は、多くの発電方式の変動を吸収出来ないのです。

原発、火力など定量発電の夜間電力を蓄える手段としては「可」です。
しかし揚水発電所では、「固定翼ポンプ水車」を使っているのがほとんどです。(同期機・・・同期ポンプ水車を使っています)
したがって、変動の激しい電力系統の変化を吸収し安定化することは出来ないわけです。
更には、揚水した分の水の量しか、当然発電できません。(河川との混合揚水の場合は河川からの取水も含まれますが)夏場の電力需給逼迫時には、有効ですが、せいぜい5~6時間しか持ちません。
要するに安定的な発電は期待出来ないのです。


◆そこで、考えるのが、「可変速揚水発電」です。
この方式では・・・・・・・
揚水の速度を1/100秒(0.01秒)単位で柔軟に変化させ揚水時のモーター消費電力を調整できます。
このため電力系統の変動を細かく吸収ができます。

◆この方式を使えば、
火力発電所に頼っています周波数自動制御(AFC)をしなくとも済みます。
◆しかし、この
「可変速揚水発電」設備は関西電力で実用化したものの、既存の揚水発電所に簡単には、置き換え出来ません。

◆可変速揚水発電は、ポンプ水車を可変速発電電動機で駆動し揚水時の消費電力を可変とするものです。

これは揚水機は、回転数・揚程(落差)・ポンプ水車の3要素で揚水に必要な電力が決まるますが、従来の揚水機は同期機のために回転数が一定、ゆえに揚水電力は一定で調整が不可能でした。

このことは、近年の原子力発電・大規模石炭火力発電などの増加で、夜間にこれらの大電力が余ってしまい、これを揚水ポンプ駆動モーターに消費(揚水)させる必要があったのです。

しかし、 2011年3月の東日本大震災、福島第1原発事故とそれに続く、各地の原発運転停止で揚水発電所は大規模石炭火力発電の夜間余剰電力の消費が主な対象となっています。

したがって、電力需給の逼迫時に大容量の揚水ポンプを起動した際の急激な電力系統の変動が現在、問題になってきました。


◆そこで可変速揚水機が夜間の電力出力調整用の設備として以前に増して注目されています。
その他に
可変速揚水機の利点としては、ポンプ水車の効率が最高となる回転数が発電運転時と揚水運転時で異なるので、運転時の損失を少なくすることができます。

一般的な同期機は直流励磁の回転子で固定回転数・固定周波数ですが、可変速機はサイクロコンバータにより低い周波数の交流を得て回転子を励磁し、可変回転数・固定周波数を実現しています。

1981年(昭和56年)に、日立製作所と関西電力が共同で開発を始め1987年(昭和62年)に成出発電所(富山県)で実証プラントを建設して世界で初めて実用化し、その後、大河内発電所向けに世界最大の容量(400MW)の発電機が設置されています。

◆我が国では、従来水力発電の建設には・・・
使用河川水量が一年中確保出来る建設地を数十年かけて現地調査し選定しますが、現在では適した場所は・・・残念ながら皆無です。
よって、揚水式も「純揚水式(河川からの取水無し)」しか作れません。

と、以上述べてきたように、コメンテーターが言うように簡単なことではありません。

最近の
TV番組のコメンテーターは、無責任な解説があまりにも多いです・・・・読者の皆さんは如何ですか?
さて、これでお話は終わりなのですが!


2011年3月の東日本大震災、福島第1原発事故発生以前の揚水発電所の手持ち資料がありますので・・・以下に参考まで、供したいと思います。


揚水発電所の概要
事例は今市発電所(純揚水式)です。[ 栃木県日光市(旧今市市)]

今市発電所は、運転開始が1988年(昭和63年)で、二つの貯水池を持ちます。
夜の余った電力で、「下の池」から「上の池」に水を上げておき、昼に電力が不足すれば「上の池」から「下の池」に水を落として発電すします、「上の池」には河川流水が無い純揚水式発電所です。

 
今市発電所(純揚水式)の全景です(有効落差524m)




(注)以下は英文の意訳です

   あらまし 

概 要
今市発電所は、栃木県西北部に位置し、日光市(旧今市市)を流れる鬼怒川筋の砥川上流部に栗山ダム、下流部に今市ダムを設置し、この間の有効落差524mを利用して、最大出力105万kWの発電を行う世界でも最大級の「純揚水式発電所」です。

TEPCOの揚水式発電所は、昭和40年に運転を開始した矢木沢発電所を初めとして、大規模揚水発電所の建設を進めています。>


現在までの稼働状況はつぎのとおりです。






  特   徴 

1.この発電所は、ダム部を除き発電所や変電所など、すべて地下式としています。
地下式発電所は岩盤掘削の「形」を、従来の「きのこ型」がら「卵型」にし、山を痛めず山の「ゆるみ」を小さく抑える新工法を採用しました。

2.発電所には、世界最大級のポンプ水車(36万kW)発電電動機(39万kVA)が設置され発電・揚水運転を行っているほか調相運転による電力系統の安定度向上にも役に立っています。

3.栗山ダム(上部ダム)は、ロックフィルダムで大容量の土砂が必要でしたが、これを貯水する区域から採取し、自然保護と貯水容量の増加をはかりました。

4.今市ダム(下部ダム)はコンクリート重力式ダムです。
使用した材料は、地下発電所や周辺トンネルから掘り出された岩石を使いました。




揚水発電所とは・・・
電気は貯められません。今、使っている電気は、今、どこかで発電している電気です。
家庭や工場で一斉に電気を使うとき、発電所は、一斉に発電をしています。

これは、電気の使用量が増加すれば、それに見合った発電所を建設しなければならないという事にもなります。

しかし、電気の使用量は、上掲Fg-1のような、昼に多く夜に少ないといった波があります。

そこで考えられたのが揚水発電です。

夜間の電気使用量が少ない時にポンプ(注ー1)で水をくみ上げておき、昼にはその水を利用して発電します。

水力による発電は、電気の使用量に合わせて発電力を調整することが、得意な発電方式ですから原子力や火力発電所ばかりでなく、このような揚水発電所を活用することにより設備をムダなく利用し、総合的に効率的な電気を安定して供給できます。

(注ー1)水車をポンプとして使えるようにしたもので発電時とは、逆に回転させて、水をくみ上げます。



↓ 栗山ダム(上部ダム)概念図


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↓ 拡大版はありません


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↓ 今市ダム(下部ダム)概念図


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↓ 栗山ダム(Rock Fill Type)上池


↓ Imaichi Power Station ( Output : 1050 [MW] )


↓ 今市ダム(Concrete Gravity Type)下池





答え:
発電設備を管理・コントロールする【ICチップ】です。
上述の「今市発電所」は無人で運転されています。
この小さな【ICチップ】の中には、さまざまなプログラムが格納されており、発電機で発生する電力や「水車・揚水ポンプ」の起動・停止・機器の状態監視など揚水発電設備全ての部分をコントロールしています。
巨大プラントの揚水発電所にはこのような【ICチップ】が数万個設置されて、  人知れず「安定した発電」を行っています。


              【完】

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